闇の河(オーストラリア現代文学傑作選)を呼んだ感想③
オーストラリアの文学に触れてみたいと思い、
著者ケイト・グレンウィルの『闇の河』という本を読み始めました。
闇の河 THE SECRET RIVER (オーストラリア現代文学傑作選第4巻)
- 作者: ケイト・グレンヴィル,一谷智子
- 出版社/メーカー: 現代企画室
- 発売日: 2016/01/21
- メディア: 単行本
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第三章 奥地開発
主人公ソーンヒルは開拓村のシドニーで暮らしていましたが、
そこから離れた岬に、家族と移り住みました。
ソーンヒルの人生でずっとできなかった、
「何かを所有する」ことがやっと実現します。
でもいざ実際に住んでみると、そこはまったく手が付けられていない
未開拓の土地なので、当然何もありません。
出典: australia4kids.wordpress.com
せっかく夢見た土地でしたが、
以前より過酷な状況になり、妻や子供が苦しむ姿。
ここで著者の絶妙な表現だなと思ったのが、
ソーンヒルが移り住んだ土地を、
そこは「世界の素材であり、世界そのものではない」
と表現していたことです。
たとえば自分がずっと憧れていたことが実現したとしても、
いざ自分が実際にそこに行ってみると、
思い描いた生活がすぐにできるわけではなく、
ゼロからスタートしなければいけないことが多いです。
自分が今住んでいる環境も、自分の憧れの街も
誰かが何もないところから時間をかけ、苦労して作り上げてきたものです。
これを通して、<夢を追いかける>ときにはそういう覚悟をもたなきゃなって
思わされました。
奥地に移り住んだことで、原住民とも接する機会多くなります。
当時のオーストラリアに移り住んだ人たちが
原住民に対してどう接したらよいか、
一人ひとり、原住民への感じ方、接し方、近寄り方、距離の取り方違う中で、
みなが共通の認識を恐る恐る築き上げて行こうとしている様子が
描かれていて、興味深かったです。
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